デコラティブアスファルトの歴史・日本編①

前回の記事で、アスファルト舗装にデザインやカラーリングなどを施す本格的な「デコラティブアスファルト」工法が行われるようになったのは、1990年代にカナダのIPC社が「ストリートプリント」の販売を開始したことに端を発することなどを解説しました。IPCが開発、販売を開始した「ストリートプリント」は、隣国アメリカを中心に利用が広がり、やがて太平洋を越えて日本にもやってくることになります。

「ストリートプリント」を最初に日本に紹介したカナダ大使館

IPCの「ストリートプリント」を最初に日本に紹介したのはカナダ大使館です。大使館に課せられた仕事はたくさんありますが、その中でも重要なもののひとつに母国の産業・企業の海外における経済活動支援があります。ほとんどの国の大使館は駐在国において自国産業・企業のマーケティング支援を行っていますが、IPCの「ストリートプリント」も、カナダ大使館による日本市場における支援対象となっていました。

2006年頃、カナダ大使館は日本におけるIPCの販売施工パートナー候補企業複数社をピックアップし、コンタクトを開始しました。その時にコンタクトされた会社にハチヤ建材出身の営業マンが立ち上げたセメントワークスという会社があり、セメントワークス経由で博多に拠点を置くトミナガコーポレーションに話が伝わったのです。トミナガコーポレーション(以下、「トミナガ」)は当時、スタンプコンクリートなどの外構工事を主業とする、ハチヤ建材の有力取引先の一社でした。トミナガの創設者富永峰一氏はその話に飛びつき、カナダ大使館へ出向いて詳しく話を聞くことにしました。

日本からの視察団がIPCを訪問、現地を視察

カナダ大使館が企画したストリートプリントの説明会にはトミナガのほかに、本ブログ主宰者の三豊工業と、埼玉県を地盤とする外構工事会社のサワケンも呼ばれていました。いずれもストリートプリントの話を聞いて興味を抱き、説明会に前向きに参加してきた会社です。大使館の説明を聞いた三社は納得し、ストリートプリントの施工の実際や現場を見てみたいという話になり、三社で一緒にカナダ・ブリティッシュコロンビア州のIPCのオフィスを訪問しようということになりました。

当時ラスベガスで開催されていたコンクリート関連大型展示会「ワールド・オブ・コンクリート」に参加した三社は、その足でカナダ・バンクーバー郊外にあるIPCの本社兼ショールームを訪ねました。日本からの訪問客に対してストリートプリント施工のデモンストレーションを行い、実際の施工現場を案内するなどIPCが応接した結果、トミナガの富永社長がイニシアティブをとる形で同社との代理店契約締結の話を持ちかけ、最終的にトミナガが締結に至ります。トミナガは、今も日本におけるストリートプリントの総代理店として位置していますが、この時締結した契約がその原点になっています。

日本でストリートプリントの本格的な営業を開始したトミナガ

トミナガは当初、それまでの主力事業であったスタンプコンクリートの、道路舗装工事における代替工法としてストリートプリントを施主に提案して受注する戦略を採りました。道路舗装工事のようにある程度の規模の現場においては、スタンプコンクリートではイニシャルコストなどが想定以上に膨らんでしまうケースが少なからずあり、それを回避するためにストリートプリントをVE(Value Engineering, より付加価値がある工法や資材などを提案してリプレースさせる提案営業法)的に提案することで受注確度を高められるという判断があったようです。

トミナガのそうした営業努力の結果、ストリートプリントはアスファルト舗装工事の現場を中心に少しずつ採用され始めていったのです。

タマホームの展示場でもストリートプリントを導入

トミナガは、大手ハウスメーカーのタマホームの展示場でもストリートプリントを使用し、結果的に普及を拡げています。タマホームは、創業以来九州を基盤としており、九州各地を中心に展示場を開設し、住宅を販売していました。トミナガはタマホームの協力企業の一社であり、トミナガはタマホームの展示場の外溝工事の仕事を包括的に請け負っていました。

展示場は、ストリートプリントの施工場所としては打って付けの場所で、トミナガはタマホームの了解を得ながら率先してストリートプリントを導入してゆきました。野球で言うユティリティプレーヤーのようにタマホームに重宝がられていたトミナガは、タマホームの多くの展示場の現場をストリートプリントでデコレートし、結果的に効率的・効果的に普及を拡げてゆきました。

道路舗装工事の現場ではスタンプコンクリートの代替工法として施主に提案し、民間工事の現場ではタマホームの展示場のようなデコラティブアスファルトによるバリューアップが望める現場で提案営業を続けた結果、ストリートプリントの採用が少しずつ、しかし着実に拡がってゆきました。トミナガは、日本にデコラティブアスファルトを普及させた一大立役者となったのです。
(次回へ続く)


(取材協力)
株式会社三豊工業代表取締役社長佐藤俊也氏
https://sanpou.biz/site/


(執筆者)
経営コンサルタント 前田 健二(まえだ・けんじ)
大学卒業と同時に渡米し、ロサンゼルスで外食ビジネスを立ち上げる。帰国後は複数のベンチャー企業のスタートアップや経営に携わり、2001年に経営コンサルタントとして独立、新規事業立上げ、アメリカ市場進出を中心に支援を行っている。

2024.12.02