デコラティブアスファルトの歴史・アメリカ編

前三回の記事で、近代スタンプコンクリートが1950年にアメリカで発明されたこと、1970年代にアメリカで本格的な普及が始まったこと、日本では1983年に東京ディズニーランドの開園とともに歴史が始まったこと、2000年代の「アウトレットモール」の開発ラッシュに伴って日本での本格的な普及が始まったことなどを解説しました。一方、アスファルト舗装にデザインやカラーリングを施す「デコラティブアスファルト」はいつ、どのようにして始まったのでしょうか。

意外と新しい「デコラティブアスファルト」の歴史

まず、アスファルト舗装にデザインやカラーリングなどを施す「デコラティブアスファルト」(Decorative asphalt)ですが、業界的・社会的に共通した呼び名はなく、一般的に「型押しアスファルト」や「デザインアスファルト」などの「通称」で呼ばれていたり、あるいは「スタンプロード」「ストリートプリント」などの「製品名」で呼ばれていたりしています。そのため、アスファルト舗装に何らかの方法でデザインやカラーリングなどを施す工法を「デコラティブアスファルト」と呼ぶことにします。

デコラティブアスファルトがどこでどのようにして生まれたかについては諸説ありますが、筆者は、デコラティブアスファルトの原始的なバージョンはアスファルト舗装を普及させた欧米諸国で20世紀初頭頃より同時多発的に誕生し、20世紀終わりにかけてカナダにおいて現在の「デコラティブアスファルト」工法の原型が生まれ、普及を始めたという説に立っています。

アメリカ初のアスファルト舗装道路は1870年に誕生

アメリカで初めてアスファルト舗装道路が完成したのは1870年です。ベルギー人化学者エドモンド・デスメッドがニュージャージー州ニュアークのペンシルバニア大通りにアスファルト舗装を施したのがアメリカ初とされています。アスファルトの優れた耐久性とコストパフォーマンスはアメリカの土木建設関係者にただちに受け入れられ、アスファルト舗装の波が瞬く間にアメリカ全土を覆うようなりました。その後、二度の世界大戦などを経て、アメリカ全土の高速道路をはじめとする道路の多くが、アスファルト舗装で覆われることとなり現在に至っています。

アスファルト舗装を施す際に何らかのデザインやカラーリングなどを施すニーズは、アスファルトの普及とともに各地で散発的に生まれ、広がっていったと想像できますが、舗装工事全体にデザインやカラーリングなどを施す本格的な「デコラティブアスファルト」工法が行われるようになったのは、1990年代になってからとされています。

「デコラティブアスファルト」を工法として売り出したIPC

なお、世界で初めて「デコラティブアスファルト」を工法として売り出したのはカナダ・ブリティッシュコロンビア州で設立されたIPC(Integrated Paving Concepts)社です。カナダはアメリカの姉妹国とも呼ぶべき、歴史や国土形成上の共通点を多く持つ国ですが、そのカナダでアスファルト舗装道路にデザインや色を施す工法「ストリートプリント」(Street Print)を包括的にパッケージ化し、販売し始めたのがIPC社です。

1992年設立のIPC社は、アスファルト舗装道路の表面をヒーターで加熱し、柔らかくなったアスファルトにデザインプレートを使ってデザインを施し、専用の染料を使って色を付ける工法および関連製品の特許を取得し、「ストリートプリント」と名付けました。近代スタンプコンクリートがアメリカで発明されて市場へ投入されたのが1950年ですから、スタンプコンクリートの誕生から40年以上の年月を経て、隣国カナダでデコラティブアスファルトが正式に産声をあげることになります。

日本を含む世界30カ国で導入されたストリートプリント

IPCのストリートプリントは、特にアスファルト舗装工事を業とする道路舗装業者を中心に採用が進み、隣国のアメリカを中心に導入が広がりました。32の特許で守られたIPCのストリートプリントの商号はデコラティブアスファルトの代名詞となり、ストリートプリントと言えばデコラティブアスファルトと言うまでにアメリカでの認知が広まりました。

IPCのストリートプリントはアメリカ以外の国でも導入され、日本を含む世界30カ国で採用されました。IPCのストリートプリントは、真っ黒で単調なアスファルトにデザインやカラーリングなどを施したいというニッチなニーズに応えるかたちで導入が広がり、相応の知名度と認知を獲得するまでに至りました。しかし、製品的には一定の広がりを見せたストリートプリントでしたが、販売元のIPCの経営自体は上手くゆかず、2006年8月にカナダの別会社0757138B.C.社に事業を譲渡し、経営破綻しています。なお、ストリートプリントの事業そのものは複数の企業へ譲渡され、代理店契約などの重要な契約などとともに譲渡先企業に承継されて現在に至っています。

そして、ストリートプリントは、スタンプコンクリートと同様に、太平洋を越えて小さな島国の日本へもやってくることになります。次回からは、日本における「デコラティブアスファルト」の歴史について解説します。


(参照サイト)
https://www.researchgate.net/publication/324988457_Colored_asphalt_and_street_print_are_decorating_paving_in_public_spaces
https://pitchbook.com/profiles/company/61214-68#investors
https://money.cnn.com/news/newsfeeds/articles/marketwire/06156770.htm


(執筆者)
経営コンサルタント 前田 健二(まえだ・けんじ)
大学卒業と同時に渡米し、ロサンゼルスで外食ビジネスを立ち上げる。帰国後は複数のベンチャー企業のスタートアップや経営に携わり、2001年に経営コンサルタントとして独立、新規事業立上げ、アメリカ市場進出を中心に支援を行っている。

2024.11.18