スタンプコンクリートの歴史・日本編その①

前回の記事では、1950年にアメリカで「デコラティブコンクリート」が誕生し、近代スタンプコンクリートの歴史の幕が開けたこと、そして現代に至るまでにアメリカを中心にヨーロッパ各国やアジア諸国にも広まっていったことなどを解説しました。その波はやがて日本にもやってくるのですが、今回は日本におけるスタンプコンクリートの歴史を、二回に渡ってお伝えします。

東京ディズニーランドの開園がスターティングポイント

日本でも、ダムの遊歩道の建設現場などにおいてコンクリートに簡単なデザインなどを施す「原始的スタンプコンクリート」の施行が散発的に行われていましたが、近代スタンプコンクリートの歴史が始まったのは1983年4月15日の東京ディズニーランドの開園からです。東京ディズニーランドは、アメリカの本家ディズニーランドを「完全コピー」する形で作られましたが、本家ディズニーランドの各所で使われていたスタンプコンクリートがそのまま日本でも使われ、奇しくも日本における近代スタンプコンクリートの歴史のスターティングポイントとなったのです。

東京ディズニーランドで施されたスタンプコンクリートは、施工に携わった関係者の関心を集めましたが、一般的に周知されるまでには至りませんでした。テーマパークと言う「非日常空間」の雰囲気を最大限に醸し出す「演出」のための工法の一種としか見なされなかった感があり、普及に向けた本格的な展開までにはまだ5年近くを待つ状態でした。

スタンプコンクリートの本格的な普及活動の開始

日本でスタンプコンクリートの本格的な普及活動が始まったのは1991年からです。建設資材販売のハチヤ建材工業株式会社の創業者がアメリカの展示会ワールド・オブ・コンクリートでスタンプコンクリートと出会い、日本へ導入するべく活動を開始したのが発端です。当時のアメリカでは、ボーマナイト社やインクリートシステム社などのスタンプコンクリートのリーディングカンパニーが市場シェア獲得にしのぎを削っていましたが、ハチヤ建材工業はインクリートシステム社と提携し、日本における代理店契約を締結したのです。

やがてハチヤ建材工業は日本でスタンプコンクリートの普及に向けた啓蒙活動を開始しましたが、本家本元のアメリカのインクリートシステム社から講師を日本へ呼んで講習会を開催するなどの各種の活動を行ったものの、開始から数年間はほとんど「鳴かず飛ばず」の状態が続いたようです。

外構工事に関わる業者の反応は、「こんなものは見たことがない」「新規性は高そうだ」「コンクリートでこんなことができるのか」といったポジティブなものが多かったようですが、スタンプコンクリートを施工などの業として行おうと手を挙げる会社は多くはなかったようです。スタンプコンクリートは新規性が高く、施主や施工店にとってもメリットが少なくないという理解は得られたものの、仕事としてどのように行えばいいのか、どのように進めていけば良いのかといった具体的なイメージを、業界関係者は掴みづらかったようです。

三豊工業とスタンプコンクリートとの出会い

当ブログを主宰している株式会社三豊工業がスタンプコンクリートと初めて出会ったのは1997年のことです。当時の三豊工業は、ハチヤ建材工業から各種の資材を仕入れるなどの取引関係にありましたが、その中でハチヤ建材工業の創業者から三豊工業の現社長にスタンプコンクリートが紹介されたのです。話を聞くやスタンプコンクリートの可能性を感じた三豊工業の現社長が施工店へ名乗りを上げ、スタンプコンクリートの施工店としての活動を開始したのです。

ハチヤ建材工業がスタンプコンクリートの本格的な普及活動を開始してから6年が過ぎていたとはいえ、当時の日本ではスタンプコンクリートの認知は未だに「ほぼゼロの状態」でした。三豊工業は、当時一般的に使われていたNTTのタウンページから静岡市と清水市内の建設会社のリストを作成し、DMを郵送しました。送付当初は反応がなかったものの、やがて清水市の建設会社が造成中の住宅地の宅地内道路でスタンプコンクリートを採用してみたいという反応があり、晴れて三豊工業のスタンプコンクリートのファーストカスタマーとなったのです。

三豊工業は、その後もハチヤ建材工業と協働で講習会を開催するなど日本でのスタンプコンクリートの啓蒙と普及に努力し、今では日本におけるスタンプコンクリートのファウンディングカンパニーの重要な一社として認識・評価されています。

増え始めた施工店

2000年の到来が見えて来る頃になると、三豊工業以外にもハチヤ建材工業の施工店に名乗りを上げる会社が徐々に増えてきました。現在、スタンプコンクリートの専門業者として業界関係者に認知されている業者が複数存在していますが、それらの会社のうちの少なからぬ数が、この頃にハチヤ建設工業の施工店としてスタンプコンクリートの仕事を始めた会社です。

いずれにせよ、日本におけるスタンプコンクリートの市場は、1990年代後半から徐々に拡大が始まり、2000年代に入って「あるものの開発ラッシュ」に伴ってブレイクし始めたのです。
(次回へ続く)


(取材協力)
株式会社三豊工業代表取締役社長佐藤俊也氏
https://sanpou.biz/site/


(執筆者)
経営コンサルタント 前田 健二(まえだ・けんじ)
大学卒業と同時に渡米し、ロサンゼルスで外食ビジネスを立ち上げる。帰国後は複数のベンチャー企業のスタートアップや経営に携わり、2001年に経営コンサルタントとして独立、新規事業立上げ、アメリカ市場進出を中心に支援を行っている。

2024.10.23