「マイクロセメント」とは何か?②
前回の記事で、マイクロセメントとは何かについての基本的な情報をお伝えしました。日本では、特にベルギーのBEALインターナショナルが開発した「モールテックス」が日本におけるマイクロセメントの代名詞となり、市場拡大を牽引してきたことなどをお伝えしました。今回は、イギリスで生まれた別のマイクロセメントの「フォークリート」をご紹介します。
フォークリートの誕生
フォークリート(ForCrete)は、今から6-7年前の2019年頃に、イギリスの塗床職人のジョージ・ハント(George Hunt)氏らが開発したマイクロセメントです。若い頃から塗床職人としてキャリアを積んでいたハント氏は、主にヨーロッパ諸国の各メーカーが開発したマイクロセメントを使った塗床の仕事を数多く行っていました。ヨーロッパではマイクロセメントが広く利用され、特にフットトラフィックが多い床で多用されていましたが、マイクロセメントが使用される現場の中には、特にバスルームなどの床などの現場においては、マイクロセメントに水が浸透して黒ずんだりシミになったりするなどのトラブルが生じるケースが少なくありませんでした。
「マイクロセメントに水が浸透してトラブルを起こす」-自ら塗床職人として直面する課題を解決しようと各メーカーに掛け合ったりしたのですが埒が明かず、ハント氏は樹脂メーカーを経営している自分の父親に相談してみました。マイクロセメントに使われている「セメント」そのものが構造的に水を吸収する性質を持っている以上水の浸透は避けられない。そうであれば狭義の意味の「セメント」ではなく、樹脂を主原料としたマイクロセメントを作ればいいのではないか。ハント親子はそう思い立ち、早速製品開発に取り組み始めました。

フォークリートと、一般的なマイクロセメントとの違いは?
一般的なマイクロセメントは、セメントと骨材と液体樹脂(ポリマー)を混ぜたいわゆる「樹脂モルタル」に、シーラーまたはトップコートと呼ばれる撥水(はっすい)コートを表面に塗って、水を吸わせないようにしたものです。モールテックスもこの一般的なセメントと骨材と液体樹脂(ポリマー)を混ぜた「樹脂モルタル」のひとつです。
「樹脂モルタル」は、セメントの素材そのものに穴が空いていて、そこから水が浸透してきます。一方、フォークリートは塗る材料すべてがエポキシ樹脂と骨材で構成されており、「樹脂モルタル」で使われているいわゆる狭義の意味の「セメント」は一切使用していません。それゆえ、水が浸透しない100%防水を実現しています。

「セメント」が一切使用されていないのに「マイクロセメント」と呼べるのか?
上にフォークリートは、材料すべてがエポキシ樹脂と骨材で構成されており、「樹脂モルタル」で使われているいわゆる狭義の意味の「セメント」は一切使用していないと書きました。狭義な意味の「セメント」が一切使用されていないフォークリートを「マイクロセメント」と果たして呼べるのでしょうか。
前に別の記事で、「セメント」とはコンクリートを構成する結合材です。セメントの主な原料は石灰的で、石灰石は日本全国どこでも採掘できるため、セメントは日本のほぼすべての場所で生産可能です。石灰石に粘土や酸化鉄などを混ぜ合わせ、焼いたものにさらに石膏などを加えて「セメント」が作られます、と書きました。多くの人の認識では、これこそ「セメント」の定義であるとするのが一般的でしょう。
しかし、これは「セメント」の中でも特に「ポルトランドセメント」の定義です。「セメント」とは本来、「ポルトラントセメント」を含む「結合剤」全般を表す総称です。そして、「結合剤」にはフォークリートを構成しているエポキシ樹脂も含まれており、フォークリートは間違いなく「マイクロセメント」の一種なのです。

フォークリートが日本で受けている理由
フォークリートは現在、日本において特に水が多用されているバスルームの床などの現場で採用検討が広がっています。これは、「一般的なマイクロセメント」で防水性が確保できず、水が浸透してしまったといったケースが少なくないことの現れであると想像されます。フォークリートはまた、バスルーム以外にもリビングルームの床、壁や水盤、建物の外壁に使えないかといった引き合いが多数生じています。ある程度の「防水性」が求められている現場においては、フォークリートへの引き合いが今後さらに増加する可能性が高いと言えるでしょう。
フォークリートは現在、住宅のバスルームなどでの採用検討が増えていますが、今後はホテルやショッピングモール、事務所などの大きめの案件での利用が広がる可能性があります。特にコンドミニアムやペンションなどでの宿泊施設での利用拡大が期待されています。また、フォークリートがもともと多用されていた「床」での利用が日本でも広がることで、市場拡大が一気に広がる可能性もあります。
水資源が比較的豊であるとされる日本ですが、日本という国とフォークリートとは、基本的に相性が良いのだと言っていいのかも知れません。

(取材協力)
株式会社三豊工業代表取締役社長佐藤俊也氏
https://sanpou.biz/site/
(参照サイト)
https://www.ssa-training.co.uk/about-us
(執筆者)
経営コンサルタント 前田 健二(まえだ・けんじ)
大学卒業と同時に渡米し、ロサンゼルスで外食ビジネスを立ち上げる。帰国後は複数のベンチャー企業のスタートアップや経営に携わり、2001年に経営コンサルタントとして独立、新規事業立上げ、アメリカ市場進出を中心に支援を行っている。
