「マイクロセメント」とは何か?①
最近「マイクロセメント」という言葉を聞く機会が増えてきました。壁や床は無論のこと、キッチンやバスルーム、あるいはカウンタートップやテーブルといった家具などにも、見た目をセメント風にしたい現場のシーンで活用されるケースが増えてきています。ところで「マイクロセメント」と一概に言うものの、「マイクロセメント」とは具体的にどのようなものなのでしょうか。本稿では、台頭著しい「マイクロセメント」についてまとめてみました。
「マイクロセメント」の定義
筆者がこれまでに確認したところでは「マイクロセメント」(Microcement)の標準的な定義は存在していませんが、一般的には「セメント、水溶性樹脂、または顔料や添加剤などによって構成された、デコラティブコーティング用資材のこと」であるとされています。通常は「薄塗り」の現場、例えば床、壁、階段、天井、キッチン、家具などに使われています。
今日的な意味での「マイクロセメント」は、ヨーロッパ主要国特にイギリス、フランス、イタリア、スペイン、オランダなどで広く使われています。ヨーロッパ諸国では、石造りの古い建物の内外装のリノベーションなどで使われるケースが多いようです。「マイクロセメント」はまた、ヨーロッパ諸国のように古い建物が存在していないアメリカでも、特にキッチンやバスルームなどの水回りの現場において、広く使われ始めています。

日本における「マイクロセメント」
日本における「マイクロセメント」の歴史ですが、その発祥や推移などについての詳しいことはわかっていません。しかし、日本の左官の現場では古くから「実質的なマイクロセメント」が使われており、各種の現場で多用されてきた歴史が存在します。
本ブログを運営する株式会社三豊工業の佐藤俊也社長によると、日本の左官の現場では、壁や床用の薄い塗り圧で使えるモルタル系素材が古くから存在していたそうです。砂と水を混ぜて使う原始的なものから始まり、プレミックスモルタルと呼ばれるものが登場してきました。プレミックスモルタルは、単純に砂とセメントを混ぜ合わせた基本的な物から、各種の混和材が混ざったものへと進化し、薄塗りで使われる現場が徐々に増えていったそうです。
「薄塗り」で使う混和材入りプレミックスモルタルとは、ニアリーイコール「マイクロセメント」であり、呼称が違うだけだと考えても問題ないと考えられます。その意味においては、日本においては「マイクロセメント」とは、古くて新しいものであると言っていいかも知れません。
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「モールテックス」の登場
そんな日本において、「マイクロセメント」というものの存在を改めて関係者に知らしめたのが「モールテックス」(Mortex)です。「モールテックス」は、ベルギーの建設資材メーカーのBEALインターナショナルが開発した「マイクロセメント」です。1991年に販売が開始され、世界で初めて「薄塗り用」を標榜した「マイクロセメント」のひとつです。
日本では、2010年頃にある左官業者が日本へ並行輸入して販売を開始したのが始まりです。当初は知名度がなく、利用もほとんどされていなかったのですが、別の不動産・リフォーム業者が日本での販売を本格的に開始したのを皮切りに現場での採用に火が付き、ブームが始まりました。モールテックスは、特に当時普及が本格化していたInstagramなどのSNS上で広く情報共有され、大きく拡散しました。モールテックスは、木製の下地にモルタルの仕上がりが欲しいと言った現場でのニーズにマッチし、一般住宅の天板やキッチンの腰壁などを中心に利用が広がってゆきました。

「モールテックス」が日本での「マイクロセメント」の代名詞に
石造りの古い建物のリノベーションなどで使われるケースが多いヨーロッパ諸国とは違い、日本ではキッチンやテーブル、あるいはカウンタートップなどの、比較的「狭くて小さい」現場でモールテックスは使われ、普及が進みました。日本では、「モールテックス」が日本での「マイクロセメント」の代名詞になったといっていいほど、一般的になっています。
「モールテックス」は、一般の住宅などに加えて、飲食店や小売店などの店舗で、カウンタートップや商品棚などに使われるケースも増えてきています。重量が軽くて見た目がコンクリート風のモールテックスは、木造建築物が多い日本の現場において、「日本ローカル」の独自ニーズにマッチする形で相応の普及を見せたと言っていいでしょう。
なお、日本の「マイクロセメントの先行者」となったモールテックスとは別に、イギリスからも新手の「マイクロセメント」が日本にやってきています。「フォークリート」(ForCrete)と言う名の「マイクロセメント」です。
(次回へ続く)

(取材協力)
株式会社三豊工業代表取締役社長佐藤俊也氏
https://sanpou.biz/site/
(参照サイト)
(執筆者)
経営コンサルタント 前田 健二(まえだ・けんじ)
大学卒業と同時に渡米し、ロサンゼルスで外食ビジネスを立ち上げる。帰国後は複数のベンチャー企業のスタートアップや経営に携わり、2001年に経営コンサルタントとして独立、新規事業立上げ、アメリカ市場進出を中心に支援を行っている。
