スタンプコンクリートの歴史:アメリカ編
これまでの記事では、主に資材としてのアスファルトとコンクリートを取り上げ、それらのメリットやデメリット、用途などについて説明させていただきましたが、建設・土木の仕事をされているプロフェッショナルの方々には当たり前の、取るに足らないテーマであったかも知れません。今回からは複数回にわたり、そうしたプロの方々も視野に入れて、いわゆる「スタンプコンクリート」について書かせていただきたいと思います。
古代ローマ帝国時代から存在した「スタンプコンクリート」
「スタンプコンクリート」という名称が業界で一般化したのは歴史的に近代に入ってからですが、「スタンプコンクリート」という「行為」つまり「コンクリートに署名・押印や何らかのデザインパターンなどを施す行為」は、古代ローマ帝国時代にはすでに行われていたとされています。
「コンクリートとは何か?」 という記事で、古代ローマ帝国時代にはローマ人が火山灰、石灰、砕石を水で混ぜ合わせた「ローマ・コンクリート」を建築物などに広く用い始めていたことを書かせていただきましたが、「ローマ・コンクリート」を使って建設された有名なパンテオン宮殿にも、簡単なデザインパターンが刻まれた「スタンプコンクリート」が施されているそうです。その後時代の経過とともにコンクリートが世界的に広く用いられるようになりましたが、特に建物などの建設に携わる人達によって、「竣工年月日」や「施工者の署名」などがコンクリート上に施されるようになりました。

「デコラティブコンクリート」の誕生
1900年代初めにはアメリカの各都市でコンクリート舗装やコンクリート建物の壁やスラブに色を付ける原始的な景観工法が施されるようになり、コンクリートにデザイン性を持たせる機運が生じました。
1950年にはアメリカの建設施工業者のブラッド・ボウマン(Brad Bowman)氏がデザインパターンを使ってコンクリートの壁や床に装飾を施すことを発案、世界で初めて「デコラティブコンクリート」(Decorative concrete)を世に送り出しました。ボウマン氏の「デコラティブコンクリート」は、木製のデザインパターンを使ってコンクリートに型押しし、レンガ調のデザインを施すものでした。なお、デコラティブとは「装飾性」という意味です。
ボウマン氏はその後も改良を重ね、アルミニウムを使ったデザインパターンでコンクリートに型押しする工法を確立、特許を取得しました。なお、ボウマン氏は業界関係者から「近代スタンプコンクリートの父」と敬意をもって呼ばれています。

1970年代にアメリカで火が付いたスタンプコンクリート
1970年代に入るとボウマン氏の「デコラティブコンクリート」は大手施工業者・建設資材販売のボーマナイト社(Bormanite Corporation)に採用され、アメリカ全土での普及が始まりました。味気ない単色のコンクリートに様々な色や模様を施すというデコラティブコンクリートのコンセプトは多くの関係者の共感を呼び、「デコラティブコンクリート」の採用が一気に進みました。
一方、ボウマン氏が発明したアルミニウム製のデザインパターンは重すぎて取り扱いが難しいという認識が一般的で、業界全体で対応が求められていました。1970年代後半には、資材メーカー経営のジョン・ナスヴィク(Jon Nasvik)氏がプラスチック製のデザインパターンを発案、「デコラティブコンクリート」の普及にさらなる拍車をかけることになりました。なお、この頃には「デコラティブコンクリート」から「スタンプコンクリート」(Stamped concrete)に業界での愛称が変わってきています。

業界最大展示会で紹介され、ブームがさらに進む
1970年代も終わりに近づくころ、アメリカ最大のコンクリート関連業界展示会「ワールド・オブ・コンクリート」でスタンプコンクリートが大々的に宣伝され、多くの来場者に衝撃を与えました。スタンプコンクリートは単にコンクリートの床や壁だけでなく、道路やドライブウェイ、パティオ、デッキなどにも広く利用できると認知され始めたのです。スタンプコンクリートはコンクリート製の建物以外にも、一般の住宅、ショッピングモールなどの店舗、駐車場、大学のキャンパス、遊園地やテーマパークなどでも利用が始まり、市場が一気に広がったのです。
現代の認識で言う「スタンプコンクリート」は、1950年のボウマン氏の発明に始まり、複数の業界関係者による改良を経て1970年代にアメリカで市場の黎明期を迎え、1980年代までには一般的な景観工法として業界関係者に広く認識されるに至っています。「スタンプコンクリート」はアメリカを中心に市場と利用を広げ、今では一般家庭でのDIYで施工されるケースも出てきています。また、アメリカ以外にもイギリス、フランス、イタリアなどのヨーロッパ諸国や、中国、韓国、タイ、インドネシアなどのアジア各国などでも広く使われています。
「スタンプコンクリート」はやがて、アメリカから太平洋を越えて日本という島国にも到来し、その歴史を刻み始めることになります。次回は、日本における「スタンプコンクリート」の歴史についてご紹介します。

(参照サイト)
https://www.concreteconstruction.net/products/decorative-concrete-surfaces/decorative-concrete-comes-of-age_o
https://www.stampedconcrete.org/how-to-video.html
(執筆者)
経営コンサルタント 前田 健二(まえだ・けんじ)
大学卒業と同時に渡米し、ロサンゼルスで外食ビジネスを立ち上げる。帰国後は複数のベンチャー企業のスタートアップや経営に携わり、2001年に経営コンサルタントとして独立、新規事業立上げ、アメリカ市場進出を中心に支援を行っている。
