スタンプコンクリートの歴史・日本編その②

あるものの開発ラッシュの「あるもの」とは?

前回の記事で、「あるものの開発ラッシュ」に伴って日本でスタンプコンクリートがブレイクし始めたとお伝えしました。そのあるものとは「アウトレットモール」です。アウトレットモールとはショッピングモールの形態のひとつで、一般的にはメーカーやブランドホルダーによる消費者への直接販売店舗が集積したモールのことです。ブランド品が通常よりも低価で購入でき、かつ非日常的なショッピング体験が楽しめるということもあり、アウトレットモールは誕生以来急速に日本でのポジションを獲得しました。

日本初のアウトレットモールは、1993年5月に現埼玉県ふじみ野市に開業した「アウトレットモール・リズム」であるとされています。日本初のアウトレットモールとしてマスコミに取り上げられたため、オープン当初は周辺の道路が慢性的に渋滞するほどの活況を呈したとされています。そして、アウトレットモール・リズムの開業から7年を数える2000年になると、各地に大型アウトレットモールが続々とオープンし、さながら「アウトレットモール開発ラッシュ」の様相を呈し始めたのです。

アウトレットモールではスタンプコンクリートが標準仕様

では、なぜ「アウトレットモール開発ラッシュ」がスタンプコンクリートをブレイクさせることになったのでしょうか。理由は単純で、アメリカ発のアウトレットモールでは、スタンプコンクリートが標準仕様になっていたからです。設計の段階で最初からスタンプコンクリートがスペックされていたのですから、施工会社はその通りに施工するほかありません。

アウトレットモールによっては、床のほとんどすべてをスタンプコンクリートで施工する仕様になっていたところなどもあり、アウトレットモールの開発が進めば進むほど、施主や施工業者を始め、一般の人たちを含めた多くの人にスタンプコンクリートが目に触れるようになってきたのです。なお、このトレンドは現在も続いており、今でも多くのアウトレットモールやショッピングモールでスタンプコンクリートが標準的に使われています。

一般の需要も拡大

アウトレットモール開発ラッシュが起きたのとほぼ同時期、賃貸住宅建設大手の大東建託株式会社が自社の開発物件にスタンプコンクリートを採用し、スタンプコンクリートの日本での利用拡大に一役買っています。2000年当時、新潟県に松沢商事という生コンクリート商社があり、アメリカのインクリートシステムの代理店をしていました。その松沢商事の経営者の親族が賃貸アパートを建てることになり、その外構工事をインクリートシステムのスタンプコンクリートで行ったのです。たまたま松沢商事と付き合いがあった大東建託の関係者が現場を視察する機会があり、スタンプコンクリートというものを実際に目にして自社の現場での採用を決めたのです。

以後、大東建託は自社物件の少なからぬ数でスタンプコンクリートを活用するようになり、結果的に日本でのスタンプコンクリートの導入を広げ、個人住宅などの一般需要にも刺激を与えることになりました。その後、大東建託のライバル企業もスタンプコンクリートの利用を開始するなど、業界全体でスタンプコンクリートが広く活用されるようになっていったのです。

現在もメインストリームはテーマパーク、ショッピングモール、集合住宅

2001年9月4日、東京ディズニーランドに続いて東京ディズニーシーが開園、東京ディズニーリゾートとして再出発しました。東京ディズニーランドでは、各アトラクションの床や壁などにスタンプコンクリートが広く使われていましたが、東京ディズニーシーでは、さらに多くの場所でスタンプコンクリートが活用されています。また、東京ディズニーリゾート以外のテーマパークでも、スタンプコンクリートが各アトラクションのデザインやイメージを実現するなどの用途で広く使われています。

アウトレットモールを含めたショッピングモールでも、引き続きスタンプコンクリートが広く使われています。最近のショッピングモールは、何らかの専門性を持たせることがある種のトレンドになっていますが、例えばイタリアをテーマとしたショッピングモールでは、スタンプコンクリートを使ってイタリアの雰囲気が醸し出されています。

一般の需要では、賃貸アパートなどの集合住宅で、特に集合住宅の外溝部分においてスタンプコンクリートが広く使われています。スタンプコンクリートが醸し出す見た目や雰囲気とリーズナブルなコストが、施主や施工店にとってのメリットになっているからです。

スタンプコンクリートは今後の日本において、新たに爆発的なブレイクをする可能性は高くないものの、各種の潜在需要に対応し、相応に進化しながら利用され続けてゆくと思われます。施工業者の中には、スタンプコンクリートを積極的に取り扱うエネルギッシュな人が少なくなく、今後新たな使われ方が発案されてくる可能性もあります。日本で40年近い歴史を持つスタンプコンクリートですが、現場においてはまだまだ活用できる余地が残っていそうです。


(取材協力)
株式会社三豊工業代表取締役社長佐藤俊也氏
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(執筆者)
経営コンサルタント 前田 健二(まえだ・けんじ)
大学卒業と同時に渡米し、ロサンゼルスで外食ビジネスを立ち上げる。帰国後は複数のベンチャー企業のスタートアップや経営に携わり、2001年に経営コンサルタントとして独立、新規事業立上げ、アメリカ市場進出を中心に支援を行っている。

2024.11.07