「アスファルト」とは何か?

前回の記事で、日本の道路舗装はアスファルト舗装とコンクリート舗装がメインであること、そして日本でアスファルト舗装の普及が本格化したのは比較的最近であることなどをご紹介しました。今では日本でもすっかりお馴染みになったアスファルトですが、具体的にアスファルトとは何なのかを正しく説明できる人は多くないと思われます。そこで今回は、知っているようで知らないアスファルトについて、その基本をお伝えします。

「石油アスファルト」と「天然アスファルト」

一般社団法人日本アスファルト協会によると、アスファルト(Asphalt)には原油を蒸留して製造する「石油アスファルト」と、石油や石炭のように最初から天然に存在する「天然アスファルト」があり、日本では一般に「石油アスファルト」を「アスファルト」と呼んでいます。原油を精製すると石油ガス、ガソリン、灯油、軽油、重油などに分留されますが、その結果残された「残渣」(ざんさ)を総称して「アスファルト」としています。なお、アスファルトは日本語で「土瀝青」(どれきせい)または地瀝青(ちれきせい)などとも呼ばれています。

アスファルトは、今日では主に道路舗装の現場で広く使用されていますが、人類の歴史においては舗装用資材ではなく接着剤や防水材として長らく利用されてきました。縄文時代の日本では接着剤として天然アスファルトが使用された記録が残されており、日本各地の遺跡からアスファルトで補修された土器や土偶などが多数出土されています。なお、天然アスファルトは、世界的には紀元前3800年ごろよりメソポタミアやインダス川流域などで建材や防水材として広く使われてきています。

なお、天然アスファルトは、現在の日本でも石油産出地帯の新潟県上越地方や東北日本海側、北海道南部地域などにおいて原油とともに産出されています。

舗装材料として使われ始めたのは1800年代半ばころから

上述の一般社団法人日本アスファルト協会によると、アスファルトが現在のような舗装材料として使われ始めたのは1800年代半ばころからです。1849年にスイスの天然アスファルト鉱山で働いていた技師のM. メリアンが、運搬中に馬車の荷車からこぼれたアスファルトの欠片が荷車の車輪で粉砕され、踏み固められて良好な路面になっていることに気づきました。それにヒントを得てアスファルトを加熱して路面に敷き、平坦に転圧する工法を思い付いたのです。これが、近代アスファルト舗装の始まりとされています。

なお、現在の自動車大国アメリカで、初めて本格的なアスファルト舗装の道路が造られたのは1870年です。ベルギー出身の化学者E.J. デスメットがニュージャージー州ニュアークの市庁舎前にアスファルト舗装道路を試験的に施行したのが始まりとされています。その後、アメリカではアスファルト舗装が急速に普及し、1871年にはワシントンDCやニューヨークなどで本格的なアスファルト舗装道路が整備されています。

日本のアスファルト舗装の歴史は1878年から

前回の記事で、日本初のアスファルト舗装は、1878年に神田の昌平橋で施工された橋面舗装であるとされていることをご紹介しました。なお、昌平橋で使われたアスファルトは、秋田県産の「天然アスファルト」だったそうです。その後、1880年頃から天然アスファルトに代わって石油アスファルトを使う機運が高まり、1908年にはアメリカから輸入した原油から日本で初めて石油アスファルトの製造に成功します。

そして1926年には明治神宮外苑に日本初の車道専用アスファルト舗装が施行され、我が国のアスファルト舗装道路の時代が幕開けを迎えます。しかし、当時の日本の道路は全般的に「未舗装」と呼ぶべき状態であり、本格的な近代舗装の時代を迎えるまでには相応の年数を要したこと、そして、アスファルトの国産化が実現し、アスファルト舗装が全国で本格的に行われるようになったのは昭和の初め頃であったことなどは前回の記事でお伝えした通りです。

「簡易舗装を含む舗装率」は81.6%

ところで、国土交通省が公表している『道路統計年報』の2016年版によると、2015年時点の我が国の「舗装率」は全国平均27.5%で、最も高い大阪市で75.1%、東京都では64.3%、埼玉県では17.2%となっています。東京に住んでいる筆者の感覚では、東京都は理解できなくはないにせよ、全国平均27.5%という数字は、いかんせん低すぎるように感じます。

実際のところ、全国平均27.5%という数字は「簡易舗装」を含んでいない数字です。「簡易舗装」とは、日本道路協会による定義によると、「表層と路盤という単純な構造で構成された、表層の厚さ3-4㎝程度の舗装」のことです。通常のアスファルト舗装よりも安く施工できるため、通常は供用期間が短い、トラックなどの大型車の通行が少ない道路などで用いられています。特に交通量の少ない地方の市町村道などでは、道路舗装にお金をかける必要がないという判断から、簡易舗装が多く使われています。

なお、この「簡易舗装」を含む「舗装率」は、2015年4月1日時点で81.6%となっています。

(参照サイト)
http://www.askyo.jp/knowledge/01-1.html

The asphalt industry from the 1800s to World War II


https://trafficnews.jp/post/78367


(執筆者)
経営コンサルタント 前田 健二(まえだ・けんじ)
大学卒業と同時に渡米し、ロサンゼルスで外食ビジネスを立ち上げる。帰国後は複数のベンチャー企業のスタートアップや経営に携わり、2001年に経営コンサルタントとして独立、新規事業立上げ、アメリカ市場進出を中心に支援を行っている。

2024.05.23