「コンクリート」のメリット
前回の記事でコンクリートの基本について説明しました。3000年以上の長い歴史を持つコンクリートですが、我が国で建設や道路舗装に使われるようになってからまだ150年ほどしかたっていません。しかし、その150年の歴史においても、コンクリートは我が国でも多様な用途で使われ始め、特に道路舗装に広く使われるようになってきています。今回は、「コンクリート」とりわけ「コンクリート舗装」のメリットについて解説します。
最大のメリットは高い耐久性
「コンクリート舗装」の最大のメリットは、その高い耐久性です。「アスファルトのデメリット」と言う記事で、コンクリート舗装はアスファルト舗装に比べて耐久性が高く、巨大な航空機が行き交う空港のエプロンや、大型バスやトラックなどの大型車両が多数走行する高速道路のサービスエリア内の大型駐車場などで使われていることなどを説明しました。
一般社団法人セメント協会の「舗装技術専門委員会報告・既存コンクリート舗装のライフサイクルコスト調査結果」(2009年1月)によると、一般国道において調査されたコンクリート舗装の供用後経過年数は約40年程度で、最大で70年程度の事例もあったそうです。なお、日本ではコンクリート舗装道路の耐用年数は、アスファルトの10年よりも長い15年ですが、欧米諸国ではコンクリート舗装道路の耐用年数は一般的に少なくとも30年であり、オランダでは40年となっています。
低いメンテナンスコスト
アスファルト舗装に比べて、低いメンテナンスコストもコンクリート舗装のメリットです。上述のセメント協会の報告書は、道路舗装工事のイニシャルコストは、アスファルト舗装がコンクリート舗装より一般的に二割程度安価であるものの、一度でもアスファルト舗装に補修などが行われると逆転し、ライフサイクルコストがコンクリート舗装より二割程度高くなると主張しています(ライフサイクルコスト(Life Cycle Cost)とは、工事のイニシャルコストに加え、道路などの運用期間中にかかる補修などのメンテナンスコストを加えた総額コストのこと)。
工事する場所などにもよりますが、コンクリート舗装はアスファルト舗装よりも相対的にメンテナンスコストが安く収まる可能性があります。特に、交通量が多い道路などではアスファルト舗装では劣化する可能性が高く、仮に凹凸などが生じた場合、その都度補修を行う必要が生じます。頻繁にメンテナンスを行う道路などでは、アスファルト舗装にかかるライフサイクルコストの方が、コンクリート舗装のライフサイクルコストを上回る可能性があります。
走行する車両の燃費効率が良い
走行する車両の燃費効率が良いこともコンクリート舗装のメリットです。アメリカのポルトラント・セメント協会(Portland Cement Association)が業界誌「コンクリート・テクノロジー・トゥデイ」に寄稿した論文は、コンクリート舗装道路を走行する大型トラックの燃費効率は、アスファルト舗装道路を走行する時よりも最大で11%良くなるという調査結果を伝えています。アメリカ北東部などの冬の寒さが厳しいエリアにおいては特に顕著で、アスファルト舗装道路の場合、比較的路面の状況が良い工事直後は良しとして、一度越冬しただけで路面が劣化し、走行する車両の燃費効率を大きく悪化させるとしています。
カナダ国立運輸技術研究センターが実施した調査でも、コンクリート舗装道路の燃費効率の良さが指摘されており、乗用車などの一般車両の燃費効率も、アスファルト舗装道路走行時に比べて、平均で3.1%向上すると主張しています。化石燃料の大量消費とそれによる炭素排出が世界的な問題となる中、コンクリート舗装の燃費効率の高さが特に注目されています。
路面温度が低い
アスファルト舗装に比べて、相対的に路面温度が低いのもコンクリート舗装のメリットです。上述のセメント協会の報告書は、コンクリート舗装はアスファルト舗装に比べて最大10℃程度の温度低減効果が得られるとした上で、特に都市部のヒートアイランド対策に一定の効果が期待できるとしています。
米ジョージア大学のパム・ノックス教授が行った調査は、日中の空気中温度が摂氏35℃に達する場合、アスファルト舗装の路面温度が最大で摂氏60℃にまで上昇するのに対し、コンクリート舗装の路面温度は最大で51.6℃と、アスファルト舗装よりも8.4℃程度低く抑えられると報告しています。アスファルト舗装は一般的に黒色で材質が柔らかいため、空気の温度や日光の熱を吸収しやすく、熱を滞留させる性質があることが理由であるとしています。一方、白やグレーなどの日光を反射しやすい色のコンクリート舗装の場合、路面温度はアスファルト舗装に比べてより低くなる可能性があるとしています。
以上、コンクリート、とりわけコンクリート舗装のメリットについて解説しました。耐久性に優れ、メンテナンスコストが総じて安いなどのメリットを持つコンクリートですが、一方ではデメリットもあります。次回は、コンクリートのデメリットについて解説します。
(参照サイト)
https://www.jcassoc.or.jp/cement/1jpn/jk8_1.html
https://trid.trb.org/View/663911
https://www.britpave.org.uk/news/Concrete-roads-save-traffic-co2-emissions-and-costs/120118
執筆者 前田 健二(まえだ・けんじ)
経営コンサルタント
大学卒業と同時に渡米し、ロサンゼルスで外食ビジネスを立ち上げる。帰国後は複数のベンチャー企業のスタートアップや経営に携わり、2001年に経営コンサルタントとして独立、新規事業立上げ、アメリカ市場進出を中心に支援を行っている。